
シュゼットの記憶
少女時代、はじめて恋したお店は
並木通りにあった「花」という
クレープのお店。
木の階段を上がると
いつも シャンソンが流れていて
(その歌の歌手がピアフという 人だと、あとあと知りました)
高級な食器の上に
美しい絵のように
クレープがのっていました。
せっせとパン屋さんで
アルバイトをしては友だちと
高校帰りに、クレープを食べるのが
とっておきの楽しみでした。
本を見て、初めて中学生で
お菓子を作ったのがクレープで
その味と 同じ味でうれしかったこと
イスやテーブルが美しい形だったこと
食器やナイフ、フォークが
見たこともさわったこともないくらい
ピカピカに輝いて
映画の中みたいだったこと、など
思い出すことはいっぱいです。
「しあわせデジュネ」にあわせて
モンシュシュでお昼に流している
フランスの曲。
この曲のせいか、なぜかこの頃、 何十年も前の、「花」で過ごした、
ほんのわずかな時間を
何度も思い出すようになりました。
わたしが広島を離れて暮らす間に
こちらに帰って行ってみ

うたとパン
生まれて初めての TV出演は
袋町小学校の6年生の頃。
「パンのうた」(たしかこんな題の曲)
という歌を、
今より前の建物のアンデルセンで
うたわせてもらいました。
らせん階段が真ん中にあって
そこに並んで、みんなで
「パァーン、パァーン♪」と
大きな口をあけてうたいました。
練習のたびに、居残りするので
土曜日の午後は
パンを買ってもいいよと
お母さんに言われ
焼きたてのパンが たのしみだった。
本番では、あごがはずれそうなくらい
大声でうたって
大人の人たちにいっぱい
ほめられたのを覚えています。
子どもの頃から
アンデルセンが大すきでした。
高校生では 横川のリトルマーメイドで
パン屋さんのアルバイトをしたくらい
パンが大すき。
パンはふっくらとして
かわいくて、
なんだか見ているだけで
みんなに夢をくれる、
すてきな食べものだと思います。

Iln'y a pas de laides amours.イルニャパドゥレドアムール(あばたもえくぼ)
右のほっぺに、えくぼがあって
昔から
「わぁーっ、すっげぇへっこむーっ」 と、いろんな人に かわかわれ
指をつっこまれたり
押したりされた、
私の唯一じまんのチャームポイントの
えくぼ。
だいすきだと
何もかもよく見えて
盲目になるということわざ、
あばたもえくぼ。
なんて かわいい気持ち。
今日のデジュネ。
「あばたにえくぼ」に見えたとしても
じまんしたい。
親バカでごめんなさい。

奥畑さんぽ
あの木も この木も
あっちも こっちも
お庭の桜が満開です。
私をいつも守ってくれる
頼もしい桜たち。
「奥畑」という この町全体が
今、さくら色です。
町の方たちが、毎年たくさんの桜を
植えてくださっているおかげです。
モンシュシュの裏の庭の桜も
みなさんに植えていただいたもの。
5年たって すくすく育っています。
ほかにも、大原駅から上って来た、
和楽荘の向かいには
たくさんの菜の花がいっぱいで
黄色いじゅうたんのよう。
「ようこそ奥畑へ」と、
お出迎えをしてくださっている
町の方の気持ちが
花たちにあらわれているようで
胸がいっぱいになります。
「奥畑」という
このなんとも言えない
なつかしさといとおしさを感じる
温かい町が すきです。
なので、新しいパスタの menu は
奥畑の美しい水でゆがく
「奥畑パスタ」と
名づけさせていただきました。
お時間がある方は
今、奥畑のいちばん美しい季節を
ぜひ、ゆっくり お散歩してみてください。

はじまりは2LDの台所
デジュネ(Déjeuner)とは、
フランス語で、昼食の意味です。
夜のお食事をせず、お昼ごはんだけを
おだしするのには 理由があります。
主婦だった昔、
2LDKの 小さなマンションで
子どもの友だちやお母さんをよんで、
よく おうちランチをしていました。
テーブルに 小さな花をかざり
だいすきな友だちのために
パンやパスタやピザ、 ケーキを焼いたり。
そうしているうちに
たくさんの方に喜んでいただき
お料理に夢中になって
いつの間にか毎日のお仕事に。
今こうして、お客さまにお出しする お料理が作れているのも
その頃の 未熟な私のお料理を食べて 私を育ててくれた友人や家族、
そして、2LDKの
小さな台所があったから。
あれから何年もたちましたが、
あの頃の、私のお料理を
楽しみにしてくれる友人を
招く時の わくわくは、
このお店で、今も変わらずあります。
そして、
「今日はなにが出てくるのかな」
と、サプライズを楽しみに
来てくださる方を
うらぎらないための準備には
夜まで

Voyage ー 旅 ー
可部線の電車が
ゆれる草の向こうに見える。
通う車から見る いつもの朝の風景。
昔 いっぱい時間があった頃
あの電車にのって
目的もなく おでかけするのが
すきだったなあ。
横川駅でキップをかって
ゴトゴト のんびりと
ちいさなひとり旅。
いちばん前にのると
運転手さん気分になれるし
窓ぎわだと、知らない いろんな人の
日常が見えては消えて 楽しい。
今日はこの辺までにしようと
気ままに降りた駅のまわりを
てくてく歩く。
初めての町。初めての道。
考えてみると
あの頃、旅をしたくなったのは
どうも 悲しいことがあった時だった。
今は、この台所の中で
旅をする。
悲しいこと さみしいこと
残念なこと。
肩をおとして うなだれる。
人生は ひとすじなわではいきません。
けれど、この小さくても じょうぶな体を いただいたから
なんとか生きてゆける。
きのうは
やさしいメールを ありがとう。
かわいい友だち。
そして、まわりを見たら、 私を想ってくれる温かい人たちが そば