
ペーパームーン
本当は、映画評論家か 政治評論家になりたかった
と、言った父。
おじいちゃんが厳格な人で
いつも抑えつけられて育ったからと
私と弟を 一度も怒ったことがありません。
映画やダンス、音楽が好きなダテ男。
家族はそんな自由人の父に
困ってばかりいたけど
笑顔がとびきり かわいくって
何だかついつい許しちゃう。
早朝いちばんに電話をしたら
すごく喜んでくれました。
「忙しいから今日は行けないけど
今度一緒にごちそう食べようね。
お父さん、ありがとう。」
そして、あとで母に
「私の大切なお父さんを
これからもよろしくお願いします」
と、伝えました。
ペーパームーンは
テイタム・オニールのデビュー作。
いつかの私たちは
こんな父と娘に見えたことでしょう。

野バラ
初夏という言葉が似合う
お天気のまいにち。
開店の頃、小さかった白い野バラが
今年は大きくなり
こぼれんばかりの
花を咲かせました。
私がここに
来る前からいる野バラ。
誰も知らないここの歴史を
黙って見てて、知っている野バラ。
香りもみごと。
耳をすましたら
なにを言っているのか
聞こえないかしら。 合唱部の先生に
いっぱいしかられながら歌った
ゲーテ作 シューベルトの
「野バラ」を想い出します。
はるか昔の人も 歌にしたくなる気持ち、 とっても わかる。
ここは少し気温が低いおかげで
真夏、私の植えた
バラたちも咲き続けます。
そして、きっと
ここに来られる みなさんに
ようこそと
花びらをゆらして
出迎えてくれることでしょう。