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シュゼットの記憶


少女時代、はじめて恋したお店は 並木通りにあった「花」という クレープのお店。 木の階段を上がると いつも シャンソンが流れていて (その歌の歌手がピアフという

人だと、あとあと知りました) 高級な食器の上に 美しい絵のように クレープがのっていました。 せっせとパン屋さんで アルバイトをしては友だちと 高校帰りに、クレープを食べるのが とっておきの楽しみでした。 本を見て、初めて中学生で お菓子を作ったのがクレープで その味と 同じ味でうれしかったこと イスやテーブルが美しい形だったこと 食器やナイフ、フォークが 見たこともさわったこともないくらい ピカピカに輝いて 映画の中みたいだったこと、など 思い出すことはいっぱいです。 「しあわせデジュネ」にあわせて モンシュシュでお昼に流している フランスの曲。 この曲のせいか、なぜかこの頃、

何十年も前の、「花」で過ごした、 ほんのわずかな時間を 何度も思い出すようになりました。 わたしが広島を離れて暮らす間に こちらに帰って行ってみると 「花」はいつの間にか なくなっていて とても淋しかった。 その頃、あまり人に

知られてなかった「クレープ」は 時代とともに手に持って食べる 気楽なおやつというイメージで 知られるようになりました。 けれど、私はクレープを そんなふうに手で持って食べる気には どうしてもなれなくて、 あれから一度も 外でクレープを食べていません。 あまりにも素敵で あこがれだった「花」を 思い出してしまったから モンシュシュでも「クレープ」を お出ししようかと考えています。 私の記憶の中に しまわれていた あの「クレープシュゼット」を。 あの頃、「花」を好きだった人は いないだろうか。 なつかしいお話は できないかしら。 そしたら、ぜひ 聞いてほしいことがある。 ほんとにすてきだったお店の あのにおいを、少しでも よみがえらせたいと思っている、 そんな小さな夢が あることを。

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